演題

第67回・2022年・横浜 / 教育講演
EL-03-1

コロナ後の透析医療

[演者] 倭 正也:1
1:りんくう総合医療センター感染症センター

現在,オミクロン株の流行に伴い,これまで原則入院とされてきたCOVID-19透析患者の専用病床が満床となっている.東京都や大阪府など都市部を中心に,重症や中等症の患者の入院を優先させるため,透析施設に対し,無症状や軽症患者は自宅療養,かかりつけの透析施設での外来透析を行うよう求める文書が出されている.また,入院治療中の患者が症状改善に伴い,自宅療養,外来透析に切り替わるケースも増えている.来院時に患者の体調変化を確実にチェックし,入院が必要な患者を遅滞なく搬送することも重要である.感染対策の面においては一般の患者とは別の入口から透析室に入り,個室さらには陰圧個室が整備されている透析室であれば申し分ないが,現状ではそうでない施設も多いかと思われる.周囲のベッドと2メートル以上の間隔を空けたり,ビニールカーテンで囲ったり,透析施行の時間帯を他の患者とずらすなど,空間的隔離あるいは時間的隔離を行えば,一般のクリニックでも十分に対応可能である.透析室は密閉・密集・密接の3密環境になりやすい.多くの患者が4時間もの長時間において一つの空間に集合して週3回の治療を受けられている.また,医師,看護師,臨床工学技士など複数のスタッフが同時に働いており,集中した時間帯に穿刺など密接に関わり,患者から次の患者へとケアが移行していく.透析室のベッド,リネン,医療器具,更衣室,食堂など多数の人が共有して使用する頻度が高い.さらに, 換気も重要である.同一時間帯に集中して複数の患者が密集した状態にいる環境下で,患者の平均年齢も約 70 歳と高齢であり,原疾患でも糖尿病性腎症が最も多く,免疫力が低下している患者には,外気による換気には注意が必要であり, さらに透析治療中の寒暖差に敏感であるため,透析室は低換気となりやすい.透析に関わるスタッフ全員の体調管理も重要である.感染症を持ち込まないようにすると共に,2次感染,クラスターの発生に繋がらないように厳密な注意が求められる.これらの感染対策に留意した透析医療はコロナ後においても,通常の季節性インフルエンザや次の新興感染症の発生時にも必要である.透析室での個室できれば陰圧個室の整備など今からの備えが求められる.
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