演題

EL-02-1

透析液関連液の排水基準

[演者] 村上 淳:1
[共同演者] 市場 晋吾:2, 土谷 健:3
1:東京女子医科大学臨床工学部, 2:東京女子医科大学臨床工学科・集中治療科, 3:東京女子医科大学血液浄化療法科

2017年11月に下水道管(汚水ます下流の取り付け管)の損傷が報告され,東京都下水道局(当局)によるpHセンサーを用いた連続モニタリング調査によって原因の究明が図られ,最終的に酸性水による損傷と解明された.
これに伴い,2019年1月25日に当局より透析医療機関に向けて“透析医療機関からの酸性排水による下水道管の損傷事例”が掲載された「透析排水と下水道管について」のリーフレットが公開された.その内容は,都内の透析医療機関からの酸性排水が原因と考えられる下水道管の損傷があったという事例紹介と,下水排除基準(pH5以上9未満)を遵守して欲しい旨の注意喚起であった.
透析施設では装置の洗浄・消毒に,次亜塩素酸ナトリウム・クエン酸・過酢酸・酢酸などを使用している.多人数用透析装置の場合,夜間集中的に洗浄を行う場合も多く,短時間に多量の消毒液が排水管に流入する恐れがある.酸性排水が流入し続けると,下水道管のみならず,建物内排水設備の損傷,そして二次的な被害として道路陥没などにまで及ぶ可能性も否定できない.そのような事例の復旧費用は原因者負担の場合もあると下水道法第18条に定められている.従って,透析医療施設では基準を遵守した排水管理を徹底しなければならない.
対策としては中和処理装置の設置,排水モニタリング(pH測定),適正な消毒剤・洗浄剤の使用などがあげあれる.問題点として,中和時の塩素ガス発生,特にビル診における中和装置設置スペースの確保,透析液清浄化の観点から安易に洗浄・消毒剤を変更できないことなどが挙げられる.
東京都下水道局からの要望もあり,日本透析医学会,日本透析医会,日本臨床工学技士会3団体主導で都内透析施設に対する現状調査が実施された.その結果を踏まえ,3団体では透析排水管理ワーキンググループを結成し,具体的な対策等を含むマニュアルの作成に取り組み「2019年版_透析排水基準」を策定した.
本講演では,下水道管の損傷事例の紹介なども行いつつ,透析(関連)排水の適正管理について解説する.
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