演題

TW-02-7

透析患者の心機能における性差~左室駆出率(LVEF)と心房性利尿ペプタイド(HANP)との相関について~

[演者] 福内 史子:1
1:葉山ハートセンター腎臓内科

【背景】透析患者の死因で最も多い心不全には性差が認められる.心不全の病態も異なり,男性では心腔拡大や左室収縮性低下が多く,女性では圧負荷による求心性左室肥大と左室収縮能は正常でも拡張能低下が多い.女性の心不全患者における圧負荷への反応はエストロゲンの関与が加わり,交感神経系やレニン・アンジオテンシン系等神経体液性因子の心筋リモデリングへの関与が男性とは異なる可能性がある.昨年本学会で発表させていただいたように,当院のデータでは,透析間体重増加率においては有意な性差を認めなかったにも関わらず,透析前,透析後のHANPはともに男性が有意に高値であり,また,LVEFは女性が有意に高値であった.
【目的】心エコーによる左室駆出率(LVEF)と心不全マーカーであるヒト心房性利尿ペプチド(Human atrial natriuretic peptide: HANP),カテコラミン三分画の採血結果との関連の解析を行い,透析患者における心機能の性差を検討.
【方法】単施設におけるレトロスペクティブな観察研究.2015 年1月より 2020 年 12 月までに当院で通院維持透析を施行した患者を対象とし年一回測定される HANP,カテコラミン三分画,心エコー上の変化を集計.LVEFとHANP,カテコラミン値との相関における性差を検討.
【結果】LVEFとHANPは,男性において負の相関を認めた(相関係数:透析前HANP-0.69,透析後HANP-0.54)が,女性においては認められなかった. LVEFとカテコラミン三分画には男女ともに相関は認められなかった.
【考察】女性は妊娠出産による循環血液量の大きな変化にも対応する心機能をもつ.心不全の予後は男性よりも女性が良好である.LVEFとHANP,カテコラミン三分画との関連には性差があり,透析間体重増加による心負荷,心機能への影響には性差がある可能性がある.
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