演題

TW-02-2

透析母体から出生した児の実際

[演者] 今井 憲:1
1:東京女子医科大学母子総合医療センター新生児医学科

1971年にConfortiniらが慢性血液透析患者における妊娠と出産の成功例を報告して以来,透析患者における妊娠と分娩例の報告が散見される.しかし,透析患者では妊孕性の低さに加え,母体並びに胎児に対する高いリスクのため妊娠出産が積極的に推奨されないことも多く,報告は少ないのが現状である.
透析母体からの出産ではその殆どは早産出生となることが知られている.一般には早産児は在胎期間が37週未満の児を指すが,特に在胎28週未満は超早産児(extremely preterm infant)とされ,呼吸窮迫症候群や動脈管開存症,脳室内出血などのリスクが高い.対して在胎期間34週から37週で出生した児は後期早産児(Late preterm infant)とされ,正期産児(在胎37週以上)と比較すると呼吸障害などの合併症は多いものの,早産児としての合併症の臨床像は超早産児とは大きく異なる.
我々は,透析母体から出生した新生児の短期予後を明らかとするため,当院で2003年から2016年に透析母体において在胎22週以降に分娩に至った症例を対象として後方視的検討を行った.結果は16例の妊娠で15例(94%)が早産であった.双胎児を含む17例の新生児が出生し,在胎期間は中央値31.7週(22.6~37.3週)で,うち16例(94%)が新生児集中治療室を生存退院していた.慢性肺疾患,動脈管開存症,脳室内出血などの新生児合併症は,コントロール群と比較して有意な差はなかったが,5例(28%)で先天形態異常が指摘された.
透析母体から出生した児の生存率が改善したのは新生児医療の進歩もあるが,透析管理を担う腎臓内科医や透析専門医と,産科管理を担う産科医の連携により,在胎期間の延長を含む母体管理の向上によるところが大きいと考えられる.今回,早産児の診療に携わる新生児科医として,透析母体から出生した児の実際についてご報告させて頂き,今後の透析患者における妊娠と出産について考える一助となれば幸いである.
詳細検索
ご案内 学術集会・総会特別号(抄録集)のご購入について