演題

第67回・2022年・横浜 / Plenary Session
PS-1

地球温暖化・慢性腎臓病・透析医療

[演者] 永井 恵:1,2
1:筑波大学附属病院日立社会連携教育研究センター, 2:(株)日立製作所日立総合病院腎臓内科

地球規模の環境変化に関して,医学や医療にどのような関わりがあるかを理解することは難しい.なぜなら,透析に関わる医療スタッフが目の前の治療対象の患者と温室効果ガスとの関係を直接的に意識することは,まずないからである.しかし,地球温暖化に伴う腎臓の健康被害は存在すると考えられている.例えば,中米やアジアの農村地域で発生する原因不明の慢性腎臓病の一部は,熱波や干ばつと関連するとされている.また,末期腎不全患者の延命に必要な維持透析は,大量の薬剤,電力,水,プラスチック製品が必要であり,1人当たりの生活に必要な温室効果ガス排出の倍以上,あるいは,平均的な医療行為による環境負荷の10倍程度とも算定されている.地球上で供給可能な資源が有限であるとすれば,資源枯渇により,必要な透析医療ができないという凄惨な事態が生じることは否定できない.未来の腎疾患患者に対して透析医療を含めた十分な治療できるかは,慢性腎臓病の診療に関わる者が,どのような医療を展開していくかにかかっているともいえる.そのため,客観的な環境アセスメントに基づく,慢性腎臓病の治療や透析医療の方策を検討する必要がある.本講演では,透析医療による環境への影響を包括的に考えるライフサイクルアセスメントと呼ばれる方法論とその現状について,および,Green Nephrologyという諸外国で行われる臨床医の活動の一部を紹介する.
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