演題

SL-11

我が国の臓器移植制度の現状と今後の展望について

[演者] 木庭 愛:1
[共同演者] 吉屋 匠平:1, 吉川 美喜子:1
1:厚生労働省健康局難病対策課移植医療対策推進室

はじめて一定の条件の下で脳死を人の死と位置づけ,脳死体からの臓器提供に係る諸課題について整理・規定し,道筋を整えた臓器移植法の成立・施行から本年で25年となる.臓器移植医療は,善意による臓器提供があってはじめて成り立つ医療であり,臓器移植法は,死体からの臓器摘出という行為が正当化されうる条件や,公平性を担保した臓器のあっせんの在り方等,臓器移植医療を成立させるための基本的な事項について社会的な合意を踏まえ規定しており,我が国における臓器移植医療の基盤を形成するものである.
この四半世紀の間,特に,本人の生前の意思表示がなくとも家族の書面による承諾によって臓器摘出ができることとした2010年の法改正以降は,脳死下の臓器提供件数は着実に増加してきた.しかしながら,依然として,諸外国に比べると,我が国の人口当たりの臓器提供件数は格段に少なく,また,臓器の提供を受けられるよりはるかに多くの方,腎臓にいたっては年間の臓器提供(脳死・心停止による)件数のおよそ100倍もの方が待機者として存在しているのが現実であり,臓器移植医療の一層の推進は待ったなしの命題である.
こうした状況を踏まえ,臓器移植分野における厚生労働省の諮問組織である厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において,昨年度,臓器移植医療制度の現状を振り返り,課題を整理するとともに,臓器移植を一層推進するための方策について検討を重ね,提言として取りまとめていただいた.臓器移植に関する普及啓発の促進,臓器提供の意思を公平・適切に汲み取るための仕組みの整備,多職種連携の推進によるドナー家族支援の充実等多岐にわたる提言をいただいたところであり,提言の内容とこれを踏まえた臓器移植医療の充実・推進に向けた今後の展望について概説したい.
併せて,令和4年の診療報酬改定に関して,臓器移植を推進する立場から,改定によって医療現場にどのような変化がもたらされることを期待するかを述べたい.
詳細検索
ご案内 学術集会・総会特別号(抄録集)のご購入について