演題

SL-03

EBMの原点からその先~Shared Decision Makingとは何か?~

[演者] 中山 健夫:1
1:京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学

エビデンスに基づく医療(evidence-based medicine: EBM)は,1991年の臨床疫学者・Guyattによる提案から四半世紀が経過し,今日の医療の基本原則の一つとなった.EBMは「科学的根拠(エビデンス)を重視して行う医療」と誤解されることが少なくないが,本来は「臨床研究による最良のエビデンス,医療者の専門性・熟練,患者の価値観,状況(患者の多様性・個別性と,医療が行われる場)の4要素を統合し,よりよい患者ケアのための意思決定を行うものである.人間集団における一般論としての「最良のエビデンス」の創出には,疫学研究が大きな役割を担っている.
2000年前後からわが国では,EBMの考え方に基づく診療ガイドラインの作成が各学会を中心に進められた.2002年に発足した日本医療機能評価機構Mindsは診療ガイドラインの情報拠点として広く知られている.Mindsによる診療ガイドラインを「健康に関する重要な課題について,医療利用者と提供者の意思決定を支援するために,システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し,益と害のバランスを勘案して,最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義している.
近年では,患者の価値観を尊重するニーズの高まりと,深化したEBMの方法論で明らかにされてきた「エビデンス信頼性(確からしさ)と限界(不確実性)」を調和させ,患者と医療者の意思決定と合意形成を導くコミュニケーションとしてShared decision making(SDM)が注目されている.伝統的なインフォームドコンセント(IC)とSDMは重なる部分があり,混同される場合もあるが,ICでは医療者が最良と考える方法を提示し,患者の納得が尊重されるにせよ,最終的にはそれに対する患者の「同意」の有無が着地点となる.一方,SDMは「患者自身,そして医療者も,どうしたら良いか本当には分っていない時(エビデンスの不確実性が高い場合)に,協力して解決策を探す」取り組みと言える.
講演ではEBMの原点から始め,診療ガイドラインの枠割,そしてSDMとは何か,その意義と可能性を述べたい.
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